以下は、Wikitopia Projectで取り組んでいる具体的な研究開発活動の一覧です。現在、最も注力しているのは街づくりプラットフォーム「dédédé」の開発と運営、および拡張現実や人工知能など最新の技術を取り入れた次世代都市プラットフォーム「Wikitopia OS」の開発です。加えて、DIY的な都市の緑化や生物多様性の増進を3Dプリンティングを用いて円滑化する技術「Printable Garden」の開発など、市民が自らの手で都市を改変(「編集」)することを容易にする諸技術の開発も行っています。これらの活動の成果は、ソースコードのオープンソース化、一般社団法人ウィキトピア・インスティテュートあるいはその他の法人・団体を通した製品化やサービス展開などといった形で社会実装します。
dédédé(ででで)

街に関する様々な意見を気軽に共有し合うためのウェブ上のプラットフォームです。ユーザは街の好きなところ(ええで)、好きではないところ(あかんで)、疑問に思うところ(なんで)を、テキストや写真、音声など複数のメディアを用いて投稿することができます。利用を続けることでユーザの街に対する見方が変わり、街づくり活動への参加に対する興味が自然と湧いてくるような仕組みの構築を目指しています。また投稿データは、街に関する市民の生の声として自治体の都市計画などにも有効に活用できると考えています。無償で利用できますので、ぜひこちらからアクセスしてみてください。
- 参考資料:
- [1] Hill, D., Bruno, M., Melo, H.P.M., Takeuchi, Y., Loreto, V. Cities Beyond Proximity. Phil. Trans. A, 2024.
Wikitopia OS

拡張現実を活用することで、街に関する市民の意見やアイデア、開発計画や未来像、その他街にまつわる様々な情報を、都市の風景と一体化した形で提示する次世代街づくりプラットフォームです。仮想的な情報を実環境に「上乗せ」するだけの従来の拡張現実よりも高い表現力を持ったシステムの構築を目標としており、建物の高さ規制の導入、幹線道路の歩道拡幅工事など、大規模な環境の変化を伴う街づくり施策の結果もリアルタイムで視覚化することが可能になります。また随所に人工知能を活用し、多様なステークホルダーの要望や環境への影響などを考慮した街づくり計画の立案を支援します。
- 参考資料:
- [1] Takeuchi, Y., Perlin, K. ClayVision: The (Elastic) Image of the City. Proc. CHI 2012.
Ninja Codes

人の目に留まらない「忍び隠れる」位置認識マーカーです。情報隠蔽技術の一種であるDeep Steganographyを応用したもので、任意の画像にニューラルネットワークを用いて少量のノイズを足すことで、位置認識マーカーとして機能する画像(Ninja Code)へと変換します。たとえば壁や地面の写真を撮影し、それらを元に生成したNinja Codeを同じ場所に貼り付ければ、景観を汚さない形で多数の位置認識マーカーを環境に付与することができます。Wikitopia OSの要素技術として、屋外空間での高品質な拡張現実を可能にする目的で開発しているものですが、他にもロボティクスなど幅広い用途への利用が期待できます。
- 参考資料:
- [1] Imoto, Y., Kato, S., Takeuchi, Y. Stealthy Location Tracking with Ninja Codes. SIGGRAPH Asia 2024 Em. Tech.
Printable Garden

道端に花を植えるなど「街に自然を持ち込む」活動は、国内外で広く実施される、最も一般的な参加型街づくり活動のひとつです。我々は、こうした活動をさらに円滑化するデジタルファブリケーション技術、具体的には土の代替物として機能する特殊な樹脂素材を用いて、多様な植物の育つ「庭」を3Dプリントする技術を開発しています。ソフトウェア上で設計した通りの形状を持ち、設計した通りのレイアウトで植物が育つ「庭」を一括で自動生成することが可能です。まだ研究段階の技術ですが、将来的には特定の小動物や鳥類、昆虫などの生息環境(蛍の棲み家となる屋上ビオトープなど)も生成できるようになると考えています。
- 参考資料:
- [1] Takeuchi, Y. 3D Printable Hydroponics: A Digital Fabrication Pipeline for Soilless Plant Cultivation. IEEE Access, 2019.
AnyLight

スポットライトやシャンデリア、太陽光など、多様な光源の照明効果を一台で模倣できるパネル型の照明装置を開発しています。仮に屋内空間の天井に本装置を敷き詰めれば、必要に応じて様々な種類の光源を、自由な位置に、好きな数だけ頭上に出現させることが可能になります。元々は、「お祭りの日は色鮮やかな光で街を照らそう」など住民がニーズに合わせて制御できる新しい公共照明を作る試みとして出発したものですが、開発にあたっては特に用途を限定せず、幅広い場面で利用される汎用的な次世代照明技術の実現を目指しています。短期的には、公共空間ではなく映像撮影スタジオなどへの応用が主になると考えています。
- 参考資料:
- [1] Takeuchi, Y. and Nagamine, K. Theory and Implementation of Integral Illumination. IEEE Access, 2022.