WIKITOPIA — RESEARCH

都市を変える技術開発

Wikitopia Projectでは、Wikitopiaすなわち「みんな」でつくる未来都市の実現を目指し様々な取り組みを進めています。我々の活動の核をなすのは、VISIONページにも挙げている4つの技術開発目標の達成に寄与する、多様なテクノロジー群の研究開発です。

DIY的な都市のデザイン

3Dプリンティングなど新しい設計・製造技術を用いて、市民によるDIY的な街づくりや自発的な都市の問題解決を支援

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変化し適応する都市環境

先端的なインタフェース技術やロボティクスを用いて、市民のニーズに合わせて動的に変化し適応する都市環境を実現

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街の未来像の共有・体験

拡張現実や仮想現実、その他新しいメディア技術を用いて、市民が街への要望や未来像を視覚化・共有する文化を創出

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円滑な合意形成・意思決定

新しい予測・分析ツールやコミュニケーションツールを用いて、街についての意思決定や問題解決、合意形成を円滑化

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このような技術開発を通じて、デジタルメディアの特徴である双方向性、大勢の人々の自由な参加を許容する民主性を取り入れた新しい都市デザインのシステムを実現できると考えています。研究活動を進める上では、以下にある一見相反する二つの要件――すなわちWikipediaの記事を執筆するような手軽さで周りの環境を編集し組み替える自由を住民に与えることと、多様な住民による編集活動が総体として公益の増進につながることを保証すること、その両方を同時に満たすことを念頭においています。

都市の自由な編集

Wikipediaの記事やLinuxなどのオープンソース・ソフトウェアは突き詰めればすべて電子データの集まりであり、PCやスマートフォンなどの情報機器を通して誰でも簡単に書き換えることができます。

それに対し、現実の都市空間を改変することは容易ではありません。Wikitopiaの実現には、様々な先端技術を用いることで、都市空間の改変を電子データの改変と同じくらい敷居の低い作業へと変えていくことが求められます。

公益増進の保証

SNSは誰でも世界中に向けて情報を発信することを可能にしましたが、同時にフェイクニュースの氾濫など新たな問題も引き起こしました。

これは個人の自由や利便性の追求が、時にはコミュニティ全体の利益つまり公益とぶつかるということを示しています。Wikitopiaの実現には、人々の自由な編集活動の総体が混乱をもたらすのではなく、都市に肯定的な影響をもたらすことを保証する仕組みの構築が求められます。

2018年に開催したデザインコンペ、WIKITOPIA INTERNATIONAL COMPETITION応募作品一覧を見ていただければわかるように、「みんな」でつくる未来都市というのは数多くの新しい技術・デザイン・制度その他の組み合わせによって実現されるものであり、一研究プロジェクトの規模でそのすべてを創出することはできません。我々は、Wikitopiaの実現に向けた広範な運動を引き起こす起爆剤としての役割を担うことが本プロジェクトの目的であると考えており、その考えに従って具体的な活動の内容を策定しています。

技術開発以外の活動としては、前述のデザインコンペを含めた各種イベントの開催や、Wikitopiaの理論的背景を論じた文章の発表、新たな学術コミュニティの創設に向けた学会活動などを行っています。また、現在はまだ計画段階ですが「Wikitopia特区」――公共空間の利用に関する規制が一部緩和された実験地区――を用意し、本格的な社会実装に向けた実証実験を進めていくことを予定しています。長期的には、特区での実験の成果をもとに新たな都市の運営原理を確立し、国内外の都市においてWikitopiaを大規模に具現化する活動を進めていきたいと考えています。

以下は、現在進行中の主要な技術開発プロジェクトの一覧です。(順次、各プロジェクトの内容についてより詳しく説明したページを用意する予定です。)

都市環境の3Dプリント

特殊な技能や多額の資金などの必要なく、誰もが街のデザインに参加できる未来の実現を目指し、都市環境を構成する様々な要素を安価に3Dプリントできる技術の開発を進めています。特に小型の公園や庭園、多様な動植物が生息するビオトープなど、人工と自然の境目にあるような環境要素をプリントする手法の確立に注力しています。未来の公園は、地域住民がウェブ上で協力して設計し、丸ごと3Dプリントされるようになるかもしれません。

参考資料:
Takeuchi, Y. 3D Printable Hydroponics: A Digital Fabrication Pipeline for Soilless Plant Cultivation. IEEE Access. 2019.
ダウンロード(PDF, 6.7MB)

万能の照明装置

スポットライトや木漏れ日など、様々な光源の光を一台で模倣できる「万能の」パネル型照明装置を開発しています。いずれ、世の中の照明の大部分は本装置で置き換えられ、BGMを変えるような手軽さで環境光を変えられるようになると考えています。公共照明もプログラム可能になり、「今日はお祭りだから光を華やかにしよう」といったように、地域のニーズに合わせて「みんな」で街の光を設計し制御できる未来が到来すると想像しています。

参考資料:
Takeuchi, Y., Suwa, S., Nagamine, K. AnyLight: Programmable Ambient Illumination via Computational Light Fields. Proc. ISS 2016.
ダウンロード(PDF, 4.5MB)

都市のための拡張現実

屋外用AR(拡張現実)の基盤技術を開発しています。特に、景観を汚すことなく高精度の位置認識を可能にする新しいマーカー技術や、環境に要素を「足す」だけでなく要素を「引く」「変形する」ことも可能にする画像処理技術などを開発しています。「この道がもう少し広ければ」「この広場に噴水があれば」など、街に対する要望をまずは仮想空間内で共有し体験することで、現実の街のよりよい設計につなげることができると考えています。

参考資料:
Takeuchi, Y., Perlin, K. ClayVision: The (Elastic) Image of the City. Proc. CHI 2012. Best Paper Award.
ダウンロード(PDF, 3.9MB)

対話の支援

感情的な言葉の応酬や「炎上」などといった状態に陥ることなく、不特定多数の人々が冷静に議論し合意を形成できるオンライン・コミュニケーション用の技術の開発を進めています。一般的に、公共空間の設計や利用については住民間で頻繁に意見が対立しますが、インタフェース・デザインや言語学の知見を応用した新たな対話支援ツールの導入により、街の未来について大勢で建設的に話し合い意見を交換することが可能になると考えています。